茫洋

日記

一杯のラーメンを啜りながらこんなことを考えた

「金龍」というラーメン屋がある。

 

大阪は心斎橋、道頓堀の繁華街の一角にある至って普通のラーメン屋だ。メニューはラーメン(600円)とチャーシュー麺(頼まないので値段は知らない)の2品のみ。白飯も瓶ビールもない。

 

正直どこにでもよくあるラーメン屋で特別美味いというわけではない。スープも鶏ガラを使っているのだろうが、どちらかといえば塩味と化学調味料を強く感じるようなものだ。麺やチャーシューも並である。店員もなぜかアジア系の外国人しかいない。

 

これでも僕は結構なラーメンジャンキーを自認していて、味にはかなりうるさい方なのだが、なぜか近くにきた時には毎回ふらふら寄ってしまう。

 

その店は半露天になっていて店をコの字に囲むようにテーブルが囲んでいる。言うならば街と店が地続きになっているのだ。そこでラーメンを啜りながら夜の街を観察するのが好きだ。

 

夜の繁華街にはいろんな人間がいる。変な物も多い。居酒屋のキャッチのお姉さんや妙な外国人を交番に連れていく駐在さん。ヤンキーの集団。金だけは持ってそうなオヤジとパパ活女。2分ごとに喋る串カツ屋の人形なんかもある。そういうものを眺めながら飲むスープには薄っぺらい化学調味料以上の滋味があって、原価率が明らかに低そうなラーメンでもなかなか悪くないように思えてくる。

 

大阪には混沌がまだ残っているのだ。今住んでいる京都も中高を過ごした神戸も土地柄からだろうか結構小綺麗な街でら、三宮にも河原町にもこんな場所はあまりない。だからかは知らないが小さい頃から大阪に点々とある歓楽街が好きだった。

 

にしても近年はこういう街も姿を消しつつある。オリンピックだか万博だか知らないが確実に街は清潔になってきている。風俗店もラブホテルも減っている。煙草の吸える喫茶店なんて絶滅寸前だ。

 

遠くない未来日本ではこんな景色をもう見られなくなるのだろう。そうなった日には東南アジアにでも移住しようかなと思っている。