茫洋

日記

小生小説 第1章

  突然で申し訳ないのだが、小生は童貞である。しかし唯の童貞ではない。「プロ童貞」なのである。ここで「プロ童貞」について若干の説明を挟む必要がある。「プロ童貞」とは所謂玄人童貞と同義ではない。いや寧ろ性行為の有無の点で全くの対極にあると断言しても過言ではないだろう。小生の唱える「プロ童貞」とは、女性に対して童貞なりの哲学、つまり善悪の彼岸にある女性へのイデアを持ち、そして自らが童貞であることに矜持を持つ者のことなのである。

 

  小生が齢19にしてかくなる人間に成り果てたのにも、少なくともあの木屋町を流れる高瀬川よりは深い訳があるのだ。拙い部分も散見されるだろうが、少しだけ小生に時間を割いてほしい。

 

  世間がやれミレニアムイヤーだのやれ対テロ戦争だのと騒いでいる丁度その頃に、小生は嘗て炭鉱で栄えた九州の田舎町に誕生した。それはそれはかのかぐや姫もかくやと思われるほど、玉のような赤子だったらしい。元来快活な性格をしていたのだが、父親が所謂転勤族なのもあり、幼き頃から転校を繰り返したことで引っ込み思案の子供に育ったようだ。友人と屋外で遊ぶこともせず小難しい歴史小説ばかり読んでいた小生を見て、男だけの環境に放り込めば青瓢箪のせがれも少しは逞しく育つのではないか、両親はそう思ったらしく、小生をある港町にあるミッション系の男子校に入れた。そして、これが全ての始まりであったのだ。